嘘つきな君
◇
「おはようございます」
突然朝礼の場に颯爽と現れた、神谷常務。
質の良さそうなスーツを完璧なまでに着こなし、作ったであろう笑顔で私達を見渡した。
そんな中、隣に並ぶ先輩達の目がハートになっているのを横目で確認して、思わず大きな溜息が漏れた。
みんな、あの笑顔に騙されてるんだ。
中身は恐ろしい悪魔だというのに。
そんな私の腹黒い心の中の呟きも露知らず、彼は眩しいほどの笑顔で口を開いた。
「まだシャルルのすべてを把握しきれていないので、本日より各部署を視察させていただきます」
静寂の中で放った言葉に、隣から小さな悲鳴が聞こえる。
淡い期待と、その嘘っぱちの笑顔に悩殺された先輩達が目をハートにして小さくガッツポーズをしていた。
その姿を、ゲンナリした顔で見つめる。
すると。
「という事で、本日より常務直々に我が社の視察を行われるという事だ。常務のご希望で社内の各部署を順に周っていく」
どこか満足気な部長の姿を見て、小さく溜息を吐く。
常務直々に視察って、どんだけ暇なんだよ『神谷常務』
どよめき立つ周りとは正反対に、全面に嫌な顔を出す。
すると。