嘘つきな君


再び長い沈黙が私達を包む。

窒息してしまいそうな気まずさが襲って、目のやり場所に困る。

案の定、神谷常務は飄々とした顔で余裕かましてるんだけどね。


それでも。

あの日と同じ様で、少し違う神谷さん。

いや――神谷常務。


雰囲気というか、なんというか、初めて会ったあの日とはやっぱり少し違う。

そりゃ、仕事場とプライベートではでもちろん違うのは分かっている。

でも、こうやって2人きりになった時ですら、どこか距離を感じる。


立場もあるから当たり前だと分かっているけど、どうしてか寂しかった。

関わりたくないと思いながらも、心のどこかでは、あの日の様に話したいと思っていた。

お互い、何のしがらみも感じる事なく。

あの日のように――。


「そういえば、視察とは仕事熱心なんですね」


だけど可愛くない私は、素っ気なくそう言葉を落とす。

ツンとそっぽを向いて、つっかかるようにそう言う。
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