嘘つきな君
だけど、グルグルと頭の中で交差する想い。
なんで寂しいとか思ってるのよ、私。
よく思い出してみてよ、あの日の事。
悪魔みたいな、最低な男だったでしょ?
もう二度と関わらない方がいいんだって。
まるで、もう一人の自分と話す様に頭の中で喝を飛ばす。
そんな時、突然耳元に気配を感じて驚いて視線を前に向ける。
すると、目の前には私の方に手を伸ばす神谷常務がいた。
まるで壁ドンでもされているような光景に、一気に心拍数が上がる。
な、何!?
いきなり、何なの!?
この状況に訳が分からずパニックになる私を余所に、少しも表情を崩さないで私を見下ろす神谷常務。
そして。
「気づいてた?」
「え……?」
「ボタン押してないけど」
告げられた言葉にポカンとする。
慌てて振り返ると、私の背後にあったエレベーターのボタンを常務が押した。
途端に、ゆっくりと動き出したエレベーター。
猛烈な決まづさが、小さな箱の中に充満する。