嘘つきな君
まだまだ謎のベールに包まれている『神谷大輔』という人物。
意地悪で悪魔みたいな『神谷大輔』と。
超一流企業の次期社長『神谷常務』。
2つの顔を持つ彼の過去を聞いてみたかった。
どんな景色を見て、どんな人達に囲まれて、どんな事を考えて生きてきたのか。
何故か、知りたくなった。
とても―――。
その素顔を知りたいと思うのは、どうしてか分からない。
だけど、聞かずにはいられなかった。
知りたくて、堪らなかったから。
そんな私の質問に、一瞬だけふっと笑った常務。
そして。
「映画」
「え?」
ポツリと言われた単語を、思わず聞き返した。
目の前では、テーブルに頬杖をついて私を見つめる彼がいる。
「海外で映画を作っていた」
「映画をですか!?」
「そ。大学も海外で、映画関係の大学を出ている」
どこか楽しそうにそう言って、深く椅子に体を預けた彼。
その姿を驚き眼で見つめる。
海外で映画を作っていたなんて、なんだかスゴイ。
というか、映画を作っていたなんて予想もしてなかった。
少なくとも、ホールディングスの傘下にある企業だと思っていた。
それか、将来社長になった時に役立つような、そんな会社。
確か、神谷ホールディングスに映画関係の企業はないはずだ。