嘘つきな君
「どんな会社か勉強したいんだって。それで、うちの会社を今部署ごとに視察してる」

「へ~仕事熱心なんだ」

「で、トップバッターは何故か広報部で、案内役は何故か私」

「うわっ、確か菜緒あの人に罵声浴びせてなかった!?」

「そうだよ~もう、決まづいったらないよ~」


ヘロヘロと項垂れた私を見て、クスクス笑って『ご愁傷様』と呟いた仁美。

完璧、面白がってるなと思って、思いっきり睨みつけた。

それでも、不意に神谷常務の事を思い出して、小さく溜息が漏れた。


「なんか、あの人といるとペースが乱される」

「なんで?」

「いちいちドキドキするっていうか……たまに突拍子もない事するから心臓がもたないよ」

「何それ、恋みたい」

「も~茶化さないでよ」

「え、違うの?」

「違うから! だって、腹立つことの方が断然多いんだもん!」


あれから、ずっと私の仕事に同行してくる様になった常務。

もちろん、ホールディングスとしての仕事もあるから、つきっきりではないけど。


「稀に見ぬイイ男だからね~。そうなるのも無理ないよ」

「だから、そういうわけじゃないってば!」

「じゃぁ、どういうわけよ」

「それは……よく分からないけど」

「やっぱり男は顔よ。ましてや日本屈指の企業の御曹司だなんて、誰でも惚れるって」


ニタリと私の顔を見て笑う仁美を睨みつける。

間違いなく、違う方向に思考がいってる。

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