嘘つきな君

「それでも、いいんですか? 撤回するなら今ですよ」


もしかしたら、私は計算高い女なのかもしれない。

次の言葉が聞きたくて、そう言わざる負えない状況を作ってる。

それに気付いているかは分からないけど、不敵な笑みを浮かべながら彼は口を開いた。


「それでも、俺はあんたが適任だと思うけど」


不敵に笑って、私を横目に見つめながら彼はそう言った。

その姿が、その声が、ドクドクと私の心臓の動きを早まらせる。


なんでだろう。

頬が上がっていく。


「――…芹沢です」

「あ?」

「お前じゃなくて、芹沢です」

「知ってる」

「だったら、そう呼んでください」

「相変わらず噛みついてくるな、お前」


睨みつける様にそう言った私を見て、ケラケラと笑った神谷常務。

その姿に、ハッと息を詰める。



――笑った。



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