嘘つきな君

今日は名古屋に日帰り出張の私達。

初めての遠出で少し楽しみにしていたのに。

これじゃぁ、先が思いやられる。


チラリと隣を盗み見れば、タブレットで何かを確認している常務がいた。

その長い指を見て、思わず釘付けになる。


顔も良ければ、指まで綺麗なのか。

っていうか、非の打ちどころがないって、まさにこの事だな。

まぁ、外見だけだったらの話だけど。


心の中で密に毒づいていると、不意にフワッと香る微かな香水の香り。

ジャスミンのいい匂いが胸に広がって、思わず香りの出所を探る。

すると。


「何?」


ヒグヒグと鼻を動かしながら、匂いの出所を探った結果。

探り当てたのは、隣の人だった。


「い……いえ」

「何だよ。言えよ」

「何でもありませんっ」


不審な顔して私を睨みつけてきた常務にそう言い放って、体勢を通路側に向ける。

その瞬間、隠れて自分の匂いを嗅いだ。


え、私汗臭くないよね!?

少し汗かいちゃったけど、匂ってないよね!?

ってか、なんて芳しい匂いを発するの、この人!!

パーフェクトすぎんのよ!!
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