嘘つきな君

「休んでください」

「資料を見せろ」

「ダメです」

「お前なぁ!」

「芹沢です」


資料をグッとカバンの中に押しやって、不機嫌そうな彼にそう言う。

すると、更に眉間に皺を寄せた彼が負けじと言葉を発した。


「確認したい事がある」

「その前に少し休んでください。時間はまだありますから」

「だから――」

「常務の体調管理も、私の仕事のうちです。倒れたら元も子もないですよ」


納得できずに資料を要求する常務の言葉に被せて、強めにそう言う。

すると、途端に口を閉ざして固まった彼。

相変わらず眉間の皺は深く刻まれている。

でも――。


「――少しだけ……休む」

「到着30分前に起こしますから」


ようやく折れた彼に、ニッコリと微笑んでやる。

それでも、内心納得していないのか少しだけ非難がましい視線を私に送ってから、ゆっくりと瞳を閉じた常務。

その、どこか子供の様な姿に思わず頬が上がる。

失礼かもしれないけど、可愛いって思う。


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