嘘つきな君

まるで母親に怒られて、不貞腐れて寝てしまった子供の様だと思って可笑しくなる。

憎めないなぁと思いながら、目を閉じた常務を見て笑った。


――常務の秘書になって、2週間が過ぎた。

広報部での引継ぎもとりあえず終えて、本格的に秘書として働きだした。

まだ手探りの状態だけど、少しづつ要領を掴んできたように思う。


まぁ、でも、毎日相変わらずこうやって言い合っている私達。

だけど、その上で確実に信頼関係の様なものが積み上がってきていると思う。

それを肌で感じた時、嬉しくて胸が温かくなる。


「やっぱり疲れてたんじゃん」


相当疲れていたのか、あっという間に眠りについた常務を見て、溜息と共に笑みを作る。

最近は少しではあるが素直になったというか、私の言う事も少しは聞いてくれる様になってきた。

始めは暴走列車みたいに、私の言う事なんて一切無視だったもん。

少しづつだけど、着実に互いに認め合っていると思う。


そんな風に、仕事の方は順調だ。

そんな中、ここ最近の悩みの種は常務が放つ独特のこの色気フェロモンだ。

この恐ろしく整ったモデル顔に少しは慣れてきたけど、彼の表情一つ一つにドキッとするのは日常茶飯事。

心おきなく、欠伸もできない。

それに一緒に隣を歩いている時の周りの視線が痛いのなんのって……。


――まぁ、こんなイケメンに出会った事のない私にとっては、刺激が強すぎるって事だ。

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