嘘つきな君
物凄いスピードで、列車は進む。

ふと窓の外に目をやれば、知らない景色が広がっていた。

あと一時間くらいかな。


確認した資料を片付けて、大きく背伸びをする。

その瞬間、一気に眠気が襲ってきた。

文字を見ていると眠くなるのは昔からで、今にも瞼が落ちてしまいそうだ。


ふと隣を見ると、気持ちよさそうに眠る常務。

まるで子供の様に寝るその姿は、一流企業の重役には見えないほど、あどけない。


でも、こっちの方が個人的には好意を感じられる。

仕事場ではテキパキと完璧な仕事ぶりの彼も、普通の29歳の男性なんだと再確認できる。

私達と何も変わらないのだと、思える。


そんな寝顔を見ていると、再度襲ってくる猛烈な睡魔。

抗おうとするけど、鉛の様に重い瞼はゆるゆると下がっていく。

昨日も遅くまで仕事をしていたから、正直私も寝不足だ。

今日の会議も遅くまであるから、ちょっとだけ休もうかな。


少しだけ……。

少しだけ……。


そんな事を頭の端で唱えながら、意識を手放した。


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