嘘つきな君



















「――…ん」


不意に目が覚めたのは、あれからどれだけ経ってからか分からない。

変な格好で寝たからか、腰が痛い。

まだ眠気が残る中、重たい瞼をゆっくりと開ける。

すると。


「起きたか」


聞こえたのは、独特のハスキーボイス。

それを耳に入れた瞬間、一気に目が覚めた。


「やばっ、私寝ちゃってたっ」

「疲れてるのはどっちだ」


跳ね起きた先にいたのは、いつの間にか私のバックの中から取り出した資料を見つめる常務。

仕事用の黒のセルフレームの眼鏡をかけて、黒目がちな瞳を私へと移動させた。
< 94 / 379 >

この作品をシェア

pagetop