朝、目が覚めたらそばにいて

「うっ!」

「環奈、アンタまた夢の世界に行ってたでしょ?」

「ひたいよー、ひゃやかー」

右のほっぺをつねられて現実に戻る。
二人の事を思って考えを巡らせていた事は黙っておく。

沙也加がつねった頬を手で摩ってると、今度は登坂くんが長い腕を伸ばして氷の入ったグラスを押し当てて来た。

「冷たっ!」

「目が覚めたか。フン」

こう言う時の二人は息が合っている。


「で、一目惚れとかなんとかって話はなんだ」


横でサワーのグラスの結露を指でなぞりながら、沙也加が面白そうに笑ってる。
助けを求めても「自分で言いな」と黙ったままだ。


「なんでこんな尋問みたいになってるのよ」


「良いから言え」


言わないと話が進まないし、登坂くんに隠す事でも無いので要所だけ掻い摘んで話す。


「本屋さんで探してた本をみつけて取ろうとしたら横取りされたけど、譲ってくれた人がいたの」


「そいつに一目惚れか」


「そいつにじゃ無くて…」


煮え切らない言い方に沙也加が茶々を入れる。


「それから本屋に通ってるくせに」


「通ってる訳じゃ無くてたまたま本屋さんに用事があるから」


ここまで言うとなぜか登坂くんが睨んでる。


「お前、だいたい本はネットで買ってただろう」


「…だね、ハハハ」

言い訳もできない指摘を受けるが本題から話がズレているから、そのまま曖昧にできないだろうか。




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