朝、目が覚めたらそばにいて
えっ?誰かの家?
まさか正太郎さんの?
いきなり家に連れ込まれるの?
いや、無理でしょう。
登坂くんが心配していたのはこう言うこと?


玄関のドアノブに手をかけた正太郎さんが後ろを振り向く。
顔が引きつって立ち止まったままの私に「何してんの?」と当たり前のように中へ入ると思っている。

「無理です!私そう言うつもりで来たんじゃありません」

「はっ?」

「だってご飯食べに行くって言うから付いて来ただけで、そう言うつもりじゃ」

すると正太郎さんはドアノブから手を離し、私に近づいてくる。

「何を期待している。良いから行くぞ」

腕を掴まれ強引に「磯野家」に連れ込まれる。

「や、や、待って下さい!」

「いらっしゃいませ、坂口さん。お待ちしていました」

「あれ?」


外からは一軒家の普通の個人宅に見えたけれど、中に入るとすぐに焼き鳥を焼く厨房が見え、その周りにはカウンターがある。
カウンターはたくさんのお客さんで埋まっていて、座るスペースはない。

玄関は一般的な家庭と同じで靴を脱いで上がると「どうぞ」と案内されたのは二階へと続く階段。これも一般的な家と同じような作りである。

二階は個室のように仕切られている。
案内された部屋は六畳ほどの広さで和室の部屋だけれど低いテーブルがあり椅子はふかふかのソファだ。
まるで家でくつろげるような空間がそこにはあった。


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