朝、目が覚めたらそばにいて
「でも面白くないですよ、私の経歴なんて」

「ぷっ、経歴って何だよ、面接試験じゃあるまいし」

「25年間、のらりくらりと生きてきましたから。何となく大学に行って、何となく就職して」

そうだ、私の人生はいつも流されている。
やりたいことも見つからず、勉強も与えられた環境で学んでいた。
手を抜いているとか、やる気を出してないとかそういうことじゃない。
いつもその時は一生懸命取り組んでいる。
でも気がつくと自分は本当にこれがやりたいんだろうかと考え込むことがあるのだ。

「勤め先は?言いたくなきゃ良いけど」

別に正太郎さんに隠すことではないので、会社名を告げる。

「そこそこ大手じゃねえかよ、何となく就職してとか嫌味か」

「違いますよ、就活とか研修とか自分なりに努力はしてきました。ただ、振り返るとそれが自分のやりたことなのか、夢なのか、わからないんですよね。だから夢を叶えた人や、やりたい仕事だと胸張って言えてる人が羨ましいんです」

「夢…か」

そうつぶやいて熱燗を手酌する。
正太郎さんも日本酒に切り替え始めた。

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