朝、目が覚めたらそばにいて
遠くから聞こえてくる電子音。
それがスマホの着信音だと気がついたのは相手が二度、三度と電話をかけてきているからだ。
音の鳴る方へ手を伸ばす。
「痛っ!」
体を起こすと頭が割れるように痛み出す。
スマホの音で頭が覚醒していく。
あれ?ここどこ?
自分の家じゃないことは確かだ。
「ホテル?」
ファッションホテルではなく、ビジネスホテルのような作りの部屋。
頭がどんどん覚醒していくとスマホの着信音がやたらと大きく聞こえてくる。
とにかく出なくっちゃ。
「…もし、もし?」
「環奈?何、その声、具合悪いの?大丈夫?」
「…沙也加?」
状況を把握しようと頭を働かすも、頭痛がひどくて考えることができない。
ただひとつわかったのは、下着姿ということだ。
「声がガラガラじゃん、やっぱり風邪ひいた?熱は?起きられないほど具合悪いの?」
「え?あ、えっ?!今何時?」
時間の感覚がないけれど平日ということだけはわかる。
「十時半」
「あ、会社…」
「そうだよ、朝から何度も電話しているのに出ないから心配したんだよ」
「…」
「環奈?」
「…沙也加」
「昨日の人と、何かあったの?」