朝、目が覚めたらそばにいて
お昼前の地下鉄に乗る。
ホテルを出た時、日差しがやたら眩しくてめまいがした。
まだ体は回復していない。
いわゆる二日酔いだ。

地下鉄の車内は営業のサラリーマンやご年配、小さい子供を連れた主婦がまばらに乗っているだけで通勤時間とは様子が全く違う。

普段は勤務時間だから、こんな時間の地下鉄に乗るのは稀で、自分が異空間に来てしまったような感覚になる。

それは気持ちが大きく関わっているのだろう。

「お酒に飲まれて一夜の過ちを犯すなんて小説でしか読んだことないよ」

実際、自分の身に起こることなんて想像していなかった。

「一夜の過ち」

自分で言って虚しくなる。

「磯野」で正太郎さんと飲んだ。
無愛想でぶっきらぼうだった彼が笑うと嬉しくて、たくさん話をした。
その話を彼は興味深く聞いてくれた。
それがさらに気分を高揚させお酒が進んでしまった。

彼と過ごす時間が楽しくてドキドキしてまるで恋をしているようだった。
実際、正太郎さんに惹かれている自分がいる。
なのに…




< 39 / 72 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop