朝、目が覚めたらそばにいて
夢は夢のままで
ずっと夢を見ていた。
柔なか髪の毛に触れ、肌の匂いも暖かさも指の滑らかさも、そして唇の湿った感覚もすべて体が覚えている。
甘酸っぱくて、幸せで、切ない感覚が身体中を駆け巡る。


ピンポーン、ピンポン、ピンポーン!


玄関のチャイムが鳴り響く音で目がさめた。

「…夢か」


朝よりも体は楽になっている。頭痛も引いていた。
インターホンのもモニターには沙也加が映っていた。

「はい」

「私」

「今、開けるね」

玄関の鍵を開けると沙也加が勢いよくドアを開け、私の顔を見た途端、安堵のため息を漏らした。
「よかった、上がるね」

沙也加とは何度も家を行き来し、お互い泊まることもあるので自然な流れで家に上がる。
時計を見ると午後六時を過ぎていた。

「何も食べてないでしょ?」

スーパーの袋から出来合いのおかずがいくつか取り出される。

「出来合いでいいよね?私に料理を作れって言わないでよ」

「何でもできる沙也加なのにね」


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