朝、目が覚めたらそばにいて

「もしもし、山下さん?」

「…はい」

その声は知っている。

「佐々木です」

ほら、やっぱり。
私と佐々木さんとの接点がすぐに頭の中に浮かんでくる。
昨日、助けてもらったじゃない。

「昨日は、ご迷惑をおかけしました」

でも他のことで頭がいっぱいになる。
どうして正太郎さんの携帯に佐々木さんが出るの?

「あの…」

「あ、正太郎くんね、ちょっと待ってて」

電話の向こう側に耳をすましていると佐々木さんが移動しているのがわかる。
微かに聞こえる声をはっきりと耳にしてしまった。

正太郎くん、起きて…

頭を殴られたようだった。
今は夜の九時近くだ。
こんな時間に二人は一緒にいる。

どうして気がつかなかったんだろう。
昨日見た二人の様子からはまったくわからなかった。
二人が恋人同士だなんて。


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