朝、目が覚めたらそばにいて

芽生え始めた恋心は抑えようとしても止まらない。
佐々木さんの存在を知っても、膨らみ始めた正太郎さんへの気持ちが大きくなるばかりだった。

会って間もない彼に強く惹かれたわけは自分でわかっている。
ずっと憧れていた千秋先生の作品の個人的な感想を語っているうちに言葉に熱がこもる。
それを正太郎さんは飽きもせず、ずっと聞いてくれていたのだ。
聞いているだけではなく、私の言葉をどんどん引き出すように相槌を入れる。

「主人公が片思いする男性の意地悪なところが好きなんですよね」

と言えば

「例えば?」

「意地悪なのは二人になった時で、他に人がいると溺愛しちゃうでしょ?もうね、他の人に取られたくないくせにってつい意地悪しちゃう彼が可愛く見えて。でも主人公はそれに気がつかない。じれったいんですけど、そのじれったさがキュンキュンしちゃうんですよ」

「ありきたりな展開じゃないか?」

「チッチッチ!正太郎さんはわかってないですよ。千秋先生の言葉のチョイスがいいんです。私はすぐに主人公になれますよ。だから片思いの相手が好きになる気持ちがすごくわかって、いつのまにかその彼に私も恋してしまうんです。素っ気なくされたら泣きたくなるし、優しくされたら舞い上がるように」

「単純だな」

「もう!だからいいんじゃないですか」

「何が?」

「今、若者は恋愛不足なんです。もっとベタな恋をするべきです。恋愛離れなんて言われて寂しくないんでしょうか?恋して笑ってキュンキュンするべきです」


「ぷっ!お前だって若者だろ」
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