朝、目が覚めたらそばにいて
「山下がまた勝手に想像して、思い込みで物事を言うからだ。誰が誰を好きだとか勝手に決めつけるな」

こんなことで登坂くんが怒るのは初めてだった。
いつもは呆れてるだけで、時にはからかってきただけなのに。

「ご、めん。気に障った?」

「別に」

「じゃなんで不機嫌な顔してるの?」

「それは…」

言葉を切って空を仰ぐ。はー、とため息をついた登坂くんはなんの脈絡もなく私が今一番聞かれたくないことを聞いてきた。

「山下、一昨日はどうしたんだよ」

一昨日は私の中で最高に気分が良かった時間。
そしてすぐに最悪な時間に変わる。
正直には言いたくない、言えない。

「どうしたって?サイン会に行って、トラブルになって…」

「そのあとは?」

「…帰ったよ、普通に」

嘘をついてしまった。
普段、登坂くんとさやかには嘘はつかない。
つけないのだ。すぐにバレるから。

「ふーん、普通にね。で、その顔はなんだ」

「顔?」

「かなりのブサイクだぞ」

「ひどい!けど、朝よりマシだよ」

「そんなことを言ってるんじゃない、そんな顔になった理由は?二日間も休んだ理由?」

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