朝、目が覚めたらそばにいて

家に着く頃には自己嫌悪と失恋した事実を解消もできずにモヤモヤした気持ちだけが残った。
登坂くんには謝らないと。
時間が経って、冷静になると登坂くんへの八つ当たりを大いに反省した。
登坂くんだって何か話があって待っててくれたのに。

本当は会って謝った方がいいけれど、職場では気が進まない。
それに一晩、この鬱陶しい気持ちを持って眠りにつく自信もない。

時刻は十一時を回っているが、失礼を承知でダイアルを押す。
すぐに通話した。
まるで私から電話が来るのをわかっていたかのように。

「もしもし?登坂くん?」

「うん」

「さっきはごめんね」

「俺も…立ち入ったことを聞いたりして悪かった」

「登坂くんは悪くない。八つ当たりだよ、私の」

「…いつでも八つ当たりしろよ」

「えっ?」

「そのための同期だろ」

「八つ当たりのための?」

「ああ、山下が落ち込んでるの見たくないからな」

「落ち込んで見えた?」

「少しな…その…正太郎とか言う男と…なんかあったのか?」

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