朝、目が覚めたらそばにいて


わざと千秋先生をという私の意図は伝わっただろうか?
正太郎さんと言いたくなかった。
恋人を良く知ってるのは当たり前だから。

「そうね、学生の頃に見つけて小説家に進めたのは私だし、恋愛小説を書いてもらったのも私の希望だったの。彼なら素晴らしい物語を生み出してくれるって彼の文章を初めて読んだ時から感じていて…今思うと怖いくらいあてにならない勘だけだったんだけれどね」

学生時代からの付き合いならもう太刀打ちできない。
この期に及んでまだ期待をしようとしている自分に呆れる。
「そうだ、電話!あの日、山下さんから電話をもらった日、正太郎くんが目を覚ました時にすぐに電話したんだけど繋がらないって…正太郎くんは私に山下さんの連絡先を教えてくれないし連絡したくてもできなかったの」

「あ!沙也加が…」

正太郎さんに電話した日、佐々木さんが電話に出て夜通し泣くことになったあの日。
正太郎さんの電話を切った後、沙也加が正太郎さんの番号を着信拒否にしていたことを思い出した。

「急にどうして?私たちの行動が強引だったのは申し訳ないと思ってるけど、いきなり着信拒否にされたら正太郎くんだってへこむわよ」

へこんだのは私の方だ。

「佐々木さんがいるのに…」

今までこらえていた思いが溢れ出す。
言ってはダメと思っていても二度目の再会が運命のいたずらみたいに思えてくる。

「私?」

佐々木さんは驚いた顔をしている。

「佐々木さんがいるのに、酔ってたからって」

「まさか、正太郎くん山下さんに手を出したの?」

「あ!」

「手は出してないって言ってたのに」

そんな話までしてるの?
頭が混乱し始める。
すると部屋のドアの方からロックが解除される音がする。


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