初恋の人
「すみません、義姉さん!」

そう言って、向かってくる紳太郎さんに、なぜか目を奪われてしまいました。

「紳太郎さん。」

二人して息を切らせていました。

「病院が大変なの。今直ぐに……」

「深雪から聞きました。今直ぐ行きます!」

そう言って紳太郎さんは、息をつかぬ間に病院に向かって走っていきました。


残ったのは、私と深雪さんの二人でした。

「深雪さん、紳太郎さんはどこにいらしたの?」

「えっ?」

深雪さんは、まるで紳太郎さんを庇うかのように、言うか言わないか迷っていました。

「大丈夫よ、紳太郎さんを責めたりしないわ。」

そう言うと、深雪さんはほっとしたように、笑顔になりました。

「お友達の方と、遊びに行く途中だったんです。」

「そう……」


その時、夫が手術道具を投げ捨てたところが、頭の中に浮かんできました。

「私も、病院へ戻りますね。」

「奥様もですか?」

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