初恋の人
まるで、病院での紳太郎さんとは別人のよう。

「外に行けないのなら、家でお呑みなさいな。」

「いえ、もう時間も遅いので……」

そう言い訳する紳太郎さんに、私は続けました。

「一杯ぐらいなら、差し支えないでしょう?」

私が紳太郎さんを見つめると、彼も私を見つめ返してくれました。


「そう……ですね。」

微笑んだ紳太郎さんと一緒に居間に戻り、急いでお酒の用意をすると、私は彼にお酌をしました。

ネクタイを少し緩ませた首元から、彼の色気を感じると、私は早々に別な場所に、目線を移動させました。

その時でした。

「義姉さんも、一杯どうですか?」

紳太郎さんは私に、お酒を勧めてくれたんです。

「兄貴がいると、呑めないでしょう?」


特に夫の前では、お酒を控えていると言う訳でもなかったのですが、この時はなぜか紳太郎さんと一緒にお酒を呑みたくなって、彼のお酌を受ける事にしました。

「ありがとう。」

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