初恋の人
くいっと一気にお酒を呑み干すと、紳太郎さんは目を丸くして驚いていました。

「いい呑みっぷりですね。」

「あら、これでも独身の時には、結構呑んだものよ。」

ふふふと笑うと紳太郎さんは、『どうぞ。』とまたお酌をしてくれました。


「義姉さんは、結婚する前は、何をしていたんですか?」

「私?私はこの病院で、看護婦をしていたのよ。」

「この病院で?」

「そうよ。それで倫太郎さんと知り合ったの。」

「へえ……道理で、包帯の巻き方が、素人じゃなかったわけだ。」

「えっ?」

私が紳太郎さんの顔を覗くと、彼はニヤッと笑いました。


「僕を呼びに来る前に、患者さんに包帯を巻いていたでしょ。」

「え、ええ……」

「誰が巻いたのか聞いたら、義姉さんだって言うから。」

確かに2、3人、夢中で包帯を巻いたかと思うけれど、あの騒ぎの中で、そんな事まで気にしていたのかと思うと、返って恥ずかしくなりました。
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