初恋の人
第2章 甘い誘惑
しかし、そんな思いも消し去ってしまうような出来事が起こりました。
紳太郎さんの婚約話が、持ち上がったんです。
お相手の女性は、電気会社の社長・浅川氏のご令嬢でした。
しかも、当の本人の紳太郎さんは最初、この話を受け入れなかったんです。
「そんな話、僕はのめません。」
全く考える事もなく、直ぐに断ってきました。
「いいか、紳太郎。自分のしたい事は主張する。だが、周りの意見は聞き入れない。それで、周りとの調和がとれると思うのか?」
「兄さんの言うことなら、聞き入れました。」
「ほう…何をだ。」
「この病院で、働く事です。」
「そうか。」
夫は目を伏せて、笑っていました。
「それはな、紳太郎。おまえが自分で選んだ道を、俺が助けてやったんだ。」
「僕は、医者の道など選んでいません。」
少し離れていた場所で聞いていた私は、胸がズキッとしました。
あんなに腕のいい医者だと言うのに、自分で選んでいないだなんて。
紳太郎さんの婚約話が、持ち上がったんです。
お相手の女性は、電気会社の社長・浅川氏のご令嬢でした。
しかも、当の本人の紳太郎さんは最初、この話を受け入れなかったんです。
「そんな話、僕はのめません。」
全く考える事もなく、直ぐに断ってきました。
「いいか、紳太郎。自分のしたい事は主張する。だが、周りの意見は聞き入れない。それで、周りとの調和がとれると思うのか?」
「兄さんの言うことなら、聞き入れました。」
「ほう…何をだ。」
「この病院で、働く事です。」
「そうか。」
夫は目を伏せて、笑っていました。
「それはな、紳太郎。おまえが自分で選んだ道を、俺が助けてやったんだ。」
「僕は、医者の道など選んでいません。」
少し離れていた場所で聞いていた私は、胸がズキッとしました。
あんなに腕のいい医者だと言うのに、自分で選んでいないだなんて。