初恋の人
夫は、お父様と一緒に実家の真木病院で働いていました。

いづれはこの病院を継ぐ気持ちでいたとは思いましたが、それはもっと先の事のように思っていたみたいで。

何の前触れもないまま、突然だったお父様の死に、かなり動揺していました。

だからなのでしょうか。

突然姿を消して、音沙汰もなかった紳太郎さんが帰って来た時には、夫は激情して紳太郎さんに殴りかかったんです。

夫からちらっと聞いた話では、医学校の同級生の女の子と、紳太郎さんは駆け落ちをしようとしたのだとか。

あちらのご両親は、偉く反対していて、その上紳太郎さんとご両親の目の間で、そのお嬢様は、馬に轢かれて亡くなってしまったとか。

その後、あちらのご両親に酷く責められて、その後に紳太郎さんは姿を消したとか。

もしかしたら夫は、紳太郎さんへの心労が重なって、お父様が亡くなったモノだと思っているようでした。

「葬式には間に合ったからな。今日は、一発だけにしてやる。」
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