初恋の人
そんなある日の事でした。

昼間にお客様が来て、その片づけをしようと、茶の間を覗いた時です。

ちょうど、紳太郎さんが机に肘を着いて、座っていました。


茶の間に入ろうか、迷いました。

でもそこまで意識をするのも、好きだと言っているようで、私は思い切って部屋の中に入ったんです。

紳太郎さんは、私に気づくと、肘を降ろしてしまいました。

「やあ、義姉さん。」

「お久しぶりね、紳太郎さん。」

「本当だ。」

「仕事は順調?同じ家に住んでいるのに、仕事が忙しいと、こうも会わないものなのね。」


会わないようにしていたのは、私の方なのに。

まるで紳太郎さんの仕事が忙しくて、すれ違っていたように振舞った私に、紳太郎さんも気づいているのでしょう。

机を指でトントンと鳴らしながら、私を見ていました。


「今日来たのは、義姉さんのお客さん?」

「いいえ、倫太郎さんよ。」


< 43 / 80 >

この作品をシェア

pagetop