初恋の人
そして紳太郎さんの唇と、私の唇が重なると、私達は無我夢中で、口づけを交わしました。

「逃げないと言うのなら、もう放しませんよ。」


ああ、これだと思いました。

私が惹かれた紳太郎さんは、狙った獲物を逃さない。

それに囚われた自分が、一番女らしく思えたのです。


紳太郎さんは私の着物の帯を外し、首筋を貪りながら、私の体にその指を滑らかに這わせていました。

自分が吐く甘い吐息が、誰かに聞かれないように、手の平で唇を押さえるのに、私は必死でした。

「ああ……あなたが僕のモノだったら、声なんか我慢させないのに……」

耳元に聞こえる紳太郎さんの甘い声に、体から蜜が溢れ出しそうでした。

「抱くよ、綾女さん。」

名前を呼ばれ、いつの間にか私は、紳太郎さんと激しく、愛し合っていました。


紳太郎さんに抱かれる女は、こんなにも女としての幸せを、体で味わっているのか。

罪の意識よりも、彼を愛する気持ちの方が、勝っていました。

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