初恋の人
どのくらい、眠りについたのでしょう。

気が付くと私は、茶の間に一人で横になっていました。

紳太郎さんに外された帯も、きちんと直っていて、私は胸を押さえました。


「夢だったのかしら……」

あの蜜月のような時間は、私の夢の中の出来事で、本当は紳太郎さんに抱かれてなんて、いないんじゃないかって。

その方が、よかったのか。

本当に抱かれた方がよかったのか。

どちらにしても、私は自分の恥ずかしい思いに、頭を抱えました。


そして私は畳の上に、紳太郎さんが身に着けていた、カフスを見つけました。

それは、紳太郎さんがシャツを脱いだ時に取れたもの。

ああ、あれは夢じゃない。

紳太郎さんに抱かれたのは、本当の事だったのだ。

私はそのカフスを、胸元に入れました。


でも、紳太郎さんの姿が見えないのを見ると、急に可笑しくなってきてしまいました。

紳太郎さんにとっては、ただの成り行きだったに違いない。


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