初恋の人
そう思う事で、私は自分の罪を洗い流そうとしていました。


そして茶の間を出て、自分の部屋へ戻ろうと廊下に出ると、詩野さんに見送られて出かける紳太郎さんの姿が見えました。

「行ってくるよ、詩野。」

「いってらっしゃいませ。」

紳太郎さんは靴を履くと、何かに気づいた様子でした。

「どうしました?」

「ああ……」

詩野さんに聞かれても、何も答えない紳太郎さん。

きっと、このカフスを探しているに違いない。

私は、胸元からカフスを取ると、廊下を歩き玄関に出ました。

「紳太郎さん、カフスなら茶の間に落ちていましたよ。」

そう言ってカフスを、紳太郎さんの手の中に、ポトッと落としました。


「まあ、見つかってよかったですね。旦那様。」

何も知らない詩野さんは、喜んで手を合わせていました。

「ありがとうございます、義姉さん。」


- 抱きますよ、綾女さん。 -


その言葉を思い出して、私の胸はまた胸打つのでした。

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