初恋の人
そう言って夫は、受話器を置きました。

私と倫太郎さんに、大丈夫だから、心配ないからと言われた詩野さんですが、なぜか不安な表情は引きませんでした。

「嫌な予感がするんです。」

私と夫は、顔を見合わせました。

「二度と紳太郎さんが、この家に帰って来ないような気がして……」

私は思わず、詩野さんを抱き寄せました。

「……そんな事、ありませんよ。」

自分にも、言い聞かせていました。


紳太郎さんは絶対帰って来る。

そう信じて。


でもそれは、期待外れに終わりました。

翌日、紳太郎さんはこの家に帰って来ず、その代り友人の宗佑さんがやってきて、紳太郎さんが事故に巻き込まれ、しばらく知り合いの家に厄介になると、伝えて来たのです。

私は愕然としました。

詩野さんの『悪い予感』が、当たったんです。
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