ロマンスがありあまる
相当なまでに痛いところを突かれたようだ。

「悪いけどさ、彼女は君と違って相当なまでに大人だよ。

少なくとも、別れを受け入れられないからって言う理由でこうして会社に怒鳴り込んでくるようなバカなまねはしないから」

さらに専務に言い返されて、稲荷さんは何も言えない様子だ。

「――で、でも…私、別れたくない…!」

やっと言い返したその声は震えていた。

「ああ、そう。

それだったら、僕にも考えがあるから」

専務はそう返事をすると、スーツの胸ポケットからスマートフォンを取り出した。

「君の結婚相手に、僕との関係をバラすから」

そう言った専務に、
「…えっ?」

稲荷さんの顔が青くなった。
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