ロマンスがありあまる
「せ、宣言って…!」

さらに言い返そうとする私の顔を専務は覗き込むと、
「僕たちは婚約をした、もうそれでいいだろう?」
と、言った。

三白眼の瞳に見つめられたせいで、背筋がゾクッ…と震えたのがわかった。

魔力でもあるのか…って、違う違う!

「今すぐに撤回してください!」

そう言い返したら、
「無理だよ、話はすでに多くの社員たちの耳に入ってる」

専務はさらに言い返した。

ごもっとも過ぎるその意見に、私は何も返すことができない。

確かに、社員たちの耳には婚約の事実が入ってきている。

そのせいで視線が集中したうえに、ヒソヒソと噂されてしまったのだ。

「…専務のせいだ」

そう呟いた私の声は、
「えっ?」

専務の耳に入ったようだった。
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