ロマンスがありあまる
婚約者って、まだそんな関係と呼べるものではない。

そもそも半ば強引に婚約をさせられたようなものな訳だし…。

「美人でしょ?」

専務が私に歩み寄ってきたかと思ったら、ポンと私の肩に手を置いた。

「しっかりしていると思うわ」

英恵さんが言った。

…えーっと、それはどう言う意味なのでしょうか?

お姉さんは私のことを気に入った…と、解釈をしてもよろしいのでしょうか?

「それで、何しにここへきたの?

退職したんだから、仕事をしにきた訳じゃないよね?」

専務は面倒くさそうに英恵さんに聞いた。

「前の専務に向かって何てことを言っているのよ。

せっかく、旅行のおみやげを持ってきたって言うのに」

英恵さんはそう答えると、紙袋を私たちに見せた。
< 72 / 107 >

この作品をシェア

pagetop