ロマンスがありあまる
「しかも、会社の跡取り息子だそうじゃないのよ!

お姉ちゃんも隅に置けないねえ」

紫子がツンと私の頭を小突いてきたけれど、それに対して私は答えることができなかった。

何でなんだ?

どうしてなんだ?

何を思って、専務は家にきたんだ?

「…専務、怒ってる?」

そう聞いた私に、
「いや、怒ってないよ。

と言うか、そんな様子じゃなかった」

紫子が答えた。

「じゃあ、どうして…?」

続けて質問をしたら、
「何かあいさつがしたいって言ってた。

“娘さんを僕にください”的なことを彼から言われるんじゃない?」

紫子は楽しそうに笑いながら答えた。

「あ、あいさつって…」

「お姉ちゃん、早く着替えてリビングにきなよ」

そう言うと、紫子は私の前から立ち去ったのだった。
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