ロマンスがありあまる
某芸人よろしく、ひょっこりと壁から顔を出してリビングの様子をうかがった。

そこにいたのは父…と、専務だった。

専務は普段のスーツ姿ではなく、白いズボンに水色のシャツ、そのうえからグレーのジャケットを羽織っていた。

いつもとは違うその格好に、私の心臓がドキッ…と鳴った。

それよりも、気まずい…。

父と専務は何も言葉を発しない。

私、出てきた方がいいかな?

専務に何か声をかけた方がいいかな?

だけど、一言も発しようとしない…それどころか、指1本すらも動かそうとしない彼らに、私はリビングへと歩み寄った。

「あのー…」

呟くように声をかけたら、彼らの視線が私に向けられた。

おいおい、いきなり向けないでくれよ…。
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