ロマンスがありあまる
今度は違う意味で心臓がドキッと鳴った。

ああ、もう何だこれは。

「座りなさい」

父がそう言ったので、私は彼らの間に腰を下ろした。

「お茶です」

紫子が私たちの前に現れたかと思ったら、テーブルのうえに麦茶が入ったグラスを3つ置いた。

「それじゃあ、ごゆっくりどうぞ」

えっ、行っちゃうの?

思わず紫子に視線を向けた私だけど、彼女はニヤニヤと笑いながらリビングから立ち去ったのだった。

マジかよ…。

非情な妹に、私はどうすればいいのかわからなかった。

ああ、どうするんだ…。

気まずいよ、気まず過ぎるよ…。

父と専務を前にした私は何をすればいのかわからない。

何も言葉を発しようとしない彼らに対して、私はどう声をかければいいのかわからない。
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