永遠に叶えたい愛がある。
学園祭1日目。
体育館でのステージがメインの日。
思った以上に当日は忙しくて、担当のキャンドルサービス以外の実行委員の仕事も手伝っていた。
各クラスの出し物の音響や照明、生徒の誘導や来校者への案内等々、学園祭を楽しむ暇もなく時間が過ぎていく。
「千曲さん、そろそろギター部の方へ行っていいよ」
実行委員長の浅川先輩がスケジュール表を見ながら私に言った。
「はい!ありがとうございます。行ってきます」
「楽しみにしてるね~」
他の実行委員の人たちに応援されながら音響室を出る。
2つ後のスケジュールがギター部の演奏だ。
初めての公演に緊張してきた。
必死に覚えた譜面を脳裏に浮かべ、指の動きを確認しながら控え室へと向かう。
全部で3曲。
誰もが知っているメジャーな曲を50人で演奏する。
緊張はするものの、楽しみだ。
舞台袖から2階に上がり後ろから体育館を出る、それが実行委員の移動するルート。
照明機の後ろをそっと通り、ステージに集中する1000人以上の生徒を見下ろしながら横を歩いていく。
真ん中辺りで椅子に座る実行委員の後ろを通りすぎようとした時だった。
「がんばれよ」
そう聞こえてきて、後ろを振り向いてみると
「宗平」
穏やかに笑う宗平と目があった。
「ここにいたんだ」
朝のミーティング以来の姿に胸が高なる。
「監視って楽だわ」
宗平の役は生徒たちの動きを上から監視すること。
何かあったときに報告できるよう、インカムをつけ実行委員長と連絡を取り合う。
「宗平らしいね、こういう役割」
ただただ座ってステージを眺めているだけに違いない。
「演奏ここから聴いてるよ。間違えんなよ?」
「ありがとう。間違えないようにがんばるよ」
宗平が聴いてくれてるなら、頑張れる。
もっともっとやる気が出てきた。
「じゃあ行ってくるね」
「おう」
宗平の“がんばれ”が頭の中をこだまする。
控え室について最後のリハーサルを行い、体育館への入り口に並んだ。
目を閉じて大きく息を鼻から吸い、静かに口から息を吐く。
入学式のとき憧れたギター部。
それが今、私もその一員となって舞台に立つ。