永遠に叶えたい愛がある。
「どうしよう…」
そう言って早希が一歩後ろへ下がった。
体育館の2階から階下へ下りると、女子生徒に囲まれている勇人の姿。
あれだと悔しさに浸る暇もないだろうな。
「普通に話しかけてあげたら?」
少し振り返って早希に言った。
「う、うん…」
早希らしくない様子だ。
きっと勇人に気を使っているんだろう。
「佐藤さん!」
私の方が前にいるのにも関わらず、勇人の声は後ろにいる早希に投げ掛けられた。
その瞬間に勇人の周りにいる女子生徒たちも一斉に振り返りこちらを見る。
うげ、この状況は。
「ほら、早希」
私は一歩横に寄ると早希の背中を押し、前に出した。
早希の姿を見て、『ああ』という表情をした女子生徒たちが少し散り始める。
その間を勇人が通り抜け、私たちの方へと歩いてきた。
「お疲れ様」
勇人は私たちの前に立ち止まり、私の声かけに「おう」と応えると早希の方へ視線を移す。
「佐藤さん…ありがとうね。声、聞こえたよ」
勇人の言葉に俯いてた早希が顔をゆっくりと上げた。
「勇人くん…」
早希が小さな笑みを浮かべる。
早希、がんばれ。
心の中でエールを送ると私はそっとその場を離れた。