永遠に叶えたい愛がある。
「雨、上がったね」
「そうだな」
喫茶店の軒先からポタポタと垂れ落ちる雨の名残を手で触れた。
今年の梅雨はきっとこれで終わりだろう。
これから暑い夏が待っているかと思うと気が遠くなる。
それでも次に宗平に会えるのを考えると、そんな暑いのも簡単に乗り越えられそうに思えた。
白岡駅までの道をどちらともなく繋いだ手に想いを委ねながら歩く。
あと少しで宗平との時間が終わってしまう。
さっき喫茶店で携帯を解約すると聞いた。
全て綾美さんの為だと。
これで宗平との連絡手段はなくなってしまった。
宗平の実家は都内に出てから新幹線で3時間かかる県で、簡単に遊びに行けるような場所でもなければ、ここにも宗平が気軽で来れる距離でもない。
次に会えるのはいつなのだろうか。
いつ、戻ってきてくれるのだろうか。
苦しみを抱える宗平にそんなこと聞けるはずもなくて。
ただただ今の時間を大切にゆっくりと足を進めた。
それでも駅には着いてしまって、午前中には感じられなかった夕方の帰宅に向かう足音たちの喧騒が耳に入る。
「それじゃあ、元気でな」
「うん」
そう言いつつも、足が動かない。
そんな足下を見ると大粒の涙が滴り落ちた。
泣かないと決めたのに。
「早希ちゃんと泣かさないって約束したのにな…」
ぐいっと腕で涙を拭いた。
最後には最高の笑顔で。
次にまた会えたときにも最高の笑顔で。
「またね!」
「おう」
宗平の後ろ姿を見送って、背中を向けると我慢した涙が一気に落ちた。
また、絶対会おう。
その時に今度こそ私の想い、伝えるから。
嫌ってくらい愛を注いであげる。
覚悟しとけよ、宗平。