永遠に叶えたい愛がある。
「何事!?」
早希に向かってそう叫ぶと、走ってこちらに向かってくる早希の顔のパーツが全て下がった。
泣くまで5秒前と言ったところだろうか。
「は、勇人くんが女の子に囲まれてどっかに行っちゃって」
そう言いながらベンチに近寄ってきた。
私は後ろに捻り背もたれに預けた身体を少し戻し、隣で仰向けになる勇人に視線を早希にバレない程度に送る。
勇人は私の視線に気づくと人差し指を鼻の前に立て、“シー”と声を出さずに言った。
「はは…そ、そんなのいつものことじゃない」
早希にいたたまれない気持ちになりながら、そっと視線を戻す。
こいつ、なぜここにいることを内緒にするのだ。
早希に見つかってやましいことでもあるのだろうか。
「話があるから待っててって言っておいたのに、行っちゃったんだもん…」
早希の顔が次第に下を向いていく。
こんな可愛い子との約束を破ってこいつは何をしているんだ?
「最近ちょっとよそよそしい気がしてて…もしかして気持ちバレちゃってるのかな?」
「ちょっ…」
まさか勇人がここで聞いてるとも思わず、早希の口から告白まがいな言葉が聞こえてきてあわてて止めようとすると、勇人が私の腕を掴んだ。
「それで避けられてるのかもしれないよね…」
早希の肩が小刻みに震えている。
遂に泣かしやがったな。
勇人をキッと睨むと、そんな私を見て勇人がやれやれと言う顔をした。
「早希…」
ごめん。
私は今とてつもなく酷い罪を犯している。
横で仰向けになるこいつはやっぱり悪魔かもしれない。
早希が大切なのにこの状況をどうしてあげたらいいのかわからない。
「あ、ほら!前に早希言ってたでしょ?本当に必要ならしがみついてでも放しちゃだめって…早希はどうなの?」
苦し紛れに出た受け売りの言葉。
これが早希にとってプラスになればいいのに。
「そうだよね…もう一回探してみる!」
パッと顔をあげると、早希は踵を返して素早く屋上を立ち去った。