永遠に叶えたい愛がある。
「ところで、用があったんでしょ?」
4時間目の大取テストの後、廊下で勇人につかまり、まさか早希と約束してたなんてことも知らずに私はここへ来た。
「…ああ」
なにかを考えるかのように呟くと、よっと言って勇人は体を起こして私と並んで座る。
ジリジリと注がれる夏の日差しが暑い。
幾度も同じ季節を勇人と過ごしてきて、同じ空気をたくさん吸ってきて、同じ気持ちを共有してきた。
今も二人の間ではそれは変わらない。
そう思っていた。
いくつものセミの声がこだまのように耳に届く。
「来週の神社の祭り、二人で行かないか?」
その声に混じって、少しボリュームの落ちた勇人の声が聞こえてきた。
いつの間にかまた低くなって、“男の人の声”になった勇人の声。
久しぶりに聞いて違和感を感じるほどだった。
それだけ私たちはこの数ヵ月、離れていたという証拠。
「ふたり…で?」
「きっとそういうの最後になるだろ?」
今までは当たり前だった“ふたり”。
それが高校生になってからあきらかになくなっていた。
どちらかが避けたわけではなく、ごく自然と。
「最後…?」
何で最後になると言うのだろう。
どちらともいなくなる訳ではないのに。
「嫌だろ?宗平さんが他の女と二人でいたら」
「それは嫌」
そんなの想像しただけでも不快な気持ちになる。
「それは向こうも同じなはずだから、ふたりで過ごすのはもう最後にしようってこと」
それは勇人も“他の男”の部類になるのだろうか。
そもそも宗平は私がどんな人といようが気にしなさそうだけど…
でもそれはそれで悲しいか。
そう思うとなんとなく早希に申し訳ない気持ちになった。
ただの幼馴染だけれど勇人と私が一緒にいることにきっと嫌だと感じているに違いない。
でも勇人とも幼馴染として今まで二人で過ごしてきて、今更私の都合で関係を変えるわけにはいかないのに。
それなのに、勇人の方が私に気を遣ってくれている。
今まで当たり前だったことが、少しずつ変化していくことは仕方のないことなのだろうか。
「だから、最後の幼馴染行事」
「うん。そうだね」