永遠に叶えたい愛がある。
「紗英、何があっても私たちは親友でいようね」
帰り道、早希が突然そんなことを言った。
「急にどうしたの?もちろん親友だけど」
なんか早希がどんどんナーバスになっている気がする。
絶対勇人のせいだ。
親友としてどうにかしてあげたいのに、どうしたらいいんだろう。
お祭り、早希も誘ってあげるべきだろうか。
でも勇人とは二人で行くって約束してしまったし…。
どうしてこういうときに宗平がいないんだろう。
きっと宗平ならアドバイスしてくれたんだろうな。
「紗英、私この夏休みの間に勇人君のこと決着つけることにきめたよ」
「え?」
「紗英が谷岡先輩に一生懸命だったこと思い出してさ、羨ましくなった」
早希がそんなことを思っていたなんて。
決着ってことは想いを伝えるということだろうか。
「早希…」
「だから、何があったとしても親友でいてよね!」
「そんなの、あたりまえだよ」
きっと早希ならうまく行く。
勇人もきっと早希の気持ちに応えてくれるよね…?
なんとなく早希にお祭りの件を伝えなきゃいけない気がした。
「あのね実は勇人にお祭りに行こうって誘われたんだ」
悪いことをしているわけではないけれど、なんとなくこれから聞いたり見たりする早希の反応が怖くて小刻みに足が震える。
「…そうなんだ」
少し間を開けると俯いてしまった早希がそう呟いた。
早希の姿を見ると、言ったことに後悔した。
「ごめん。でも今までも二人で行ってたんだけど、今年で最後にしようって」
「…え?今年で最後って?」
俯き気味だった早希の顔が一瞬にして横を歩く私の顔を見上げた。
「あ、ほら勇人も宗平に気を遣ってるみたいでさ」
あーなるほど。と早希が何度か頷きを見せる。
「そっかあ。勇人君も大変だねえ」
ん?勇人も大変?そうなのか?
私は首を傾げた。
なんか私って自分のことばかりで周りが見えていないような気がする。
「あ、早希も嫌だよね。私が勇人とお祭りに行くなんて」
「うーん。まあちょっとはヤキモチ焼くけど、でも私にそんな権利ないし、それに紗英は谷岡さんにゾッコンってこと知ってるからさ」
「ゾッコンって」
私はぷっと吹いた。
間違いではないけど、なんか照れ臭い。
横を見ると、早希と目が合い一瞬微笑むと早希が立ち止まった。
一歩遅れて気づいた私も立ち止まる。
「早希?」
早希の方へ体を向けると早希が寄って来て私の両手を握った。
「私、勇人君のこと頑張ってみる。だから紗英も応援してくれる?」
早希の顔から初めてみるくらいの本気が伝わってくる。
「あたりまえだよ」
そういって、私も早希の手を強く握り返した。
私になにができるのかなんて本当にわからない。
でももしかすると、なによりも大事にしたい存在かもしれない。
だから、私にできることをなんでもしてあげたい。
「あ、でもちょっと早希。勇人はいいけど、私のこと忘れないでよ?寂しい夏休みなんだから」
「そう言うけど、送ってあげた写メがあれば寂しくなんかないくせに」
「う…それは否めない」
「顔赤くしちゃって、まったく紗英ってば本当に素直なんだから」
なんだかんだやっぱり早希の方が一枚上手なんだ。
私は見ないでと言わんばかりに顔をカバンで隠した。