永遠に叶えたい愛がある。





「なんで浴衣じゃないいんだよ」



夕方だというのに蒸し暑い中ミンミンと大合唱するセミと、会って一言目がこれのこの男。



「だって暑いし歩きにくいじゃん」



勇人だって浴衣じゃないくせに何言ってんだ。




「相変わらず色気ねえな」



「勇人に色気なんて見せる必要ないもん」



「宗平さんにはいつになったら見せられるんだ?」



「どういうい…」



言いかけて気づいた。



勇人の意地悪。



いつになったら見せられるのかなんて、そんなの。



数日後かもしれないし、何十年後かもしれないし、最悪一生見せることなんてできないかもしれないのに。




「あ…悪い、そういう意味じゃなくてさ」




何かに気づいた素振りで慌てて勇人が謝ってきた。




「…ぷっ!めちゃくちゃ真剣…」



勇人の姿に笑いがこみ上げる。



「わざとかよ」




この感覚久しぶりだ。



数か月前まではこれが当たり前だったのに、環境が変わるとここまで大きく変わってしまうんだね。




「いや、わざとじゃないけど勇人が面白くて」






夏休みの初日、近所に住んでいるのに神社の入り口で待ち合わせをした。



すでに参道は屋台でにぎわっている。



私たち二人は並んで境内に向かって屋台の間を歩き始めた。


< 146 / 173 >

この作品をシェア

pagetop