永遠に叶えたい愛がある。
「もうすぐコンクールでしょ?」
コーヒーのいい香りが漂う。
まだ慣れない大人の味を今日もいただく。
「うん、今週末ね」
初めてここに来たときは雨が降っていたっけ。
ついの前のことなのに、遥か昔に感じる。
あれから宗平との記憶を、幸せを感じるために時間がある度にこの喫茶店に来ていた。
もしかしたら宗平も来ているんじゃないかと密かに淡い期待を抱いて。
今週末にコンクールが待っているというのに。
「もちろん私も見に行くからね」
「うん、ありがとう!とてもいい演奏になると思うからぜひ」
「すごく楽しみ!…それにしても雰囲気いいね、この喫茶店」
この喫茶店について早希には話していない。
ただ行き付けということだけは言ってあるけれど。
幸せな気分を味わうために来てるって自分に言い聞かせているけれど、頭のどこかではただの過去にしがみつく弱い自分だって思っている部分もあって。
だから早希にはなんとなく言い出せなかった。
「僕も見に行かせてくれないかな」
その声に上を見上げると、
「マスター!」
微笑む喫茶店のマスターがいた。