永遠に叶えたい愛がある。
「紗英ちゃん、もしかして夏休みをずっとここで過ごして終わるつもりかい?」
ミーンミーンとちょっと鬱陶しいくらい蝉の声が聞こえてくる。
今日も日差しが強く、外は夏模様。
またまた鬱陶しいくらいある宿題の山を少しずつ片しながら、片手でコーヒーカップを持つ。
「だって、宿題が終わらない」
やれやれとした顔をするマスターに嘆いた。
コンクール以来、ほとんどいつもの喫茶店で過ごしている。
夏休みに入ってから一度も手につけていなかった宿題が終わり間近になって襲ってきた。
テーブルの上でクーラーの風によって揺れる花瓶に入った小さな向日葵が宿題に追われる嫌な気持ちを癒す。
「せっかく高校生になったんだから、少しは女子高生らしく遊ばないと」
そんなこと言われても。
宿題が終わらないことには新学期を快く迎えられない。
「誰か手伝ってほしいくらいだよ…」
そう呟くと同時に、キーっと入り口のドアが開く音が聞こえてきた。
「いらっしゃい」
入り口を向くマスターを横目に、また宿題へと目を移す。
「いつもの下さい」
可愛らしい女性の声が聞こえてきた。
そんなことも気にせず、ひたすらと手を動かす。
「あ…そうだ。谷岡さんこの子の宿題見てあげてよ」
マスターの声が聞こえてきた。
「…え…?」
一瞬にして心臓が大きく動く。
「……」
知っている名前だった。
正確には名字だけど。