永遠に叶えたい愛がある。




「どうしてここへ…?」



ここに座ってからずっと疑問に思っていた。



違和感を感じたのはマスターが綾美さんの名前を覚えていたこと。



それに親しそうに話していたからだ。



「あ…えっと、こっちに来るときは必ずここに寄っていたんです」



そんなに何度も来ていたのだろうか。



二人の実家からはかなり遠いはずなのに。



それに、宗平がこっちに来たのは少なくとも1年前からだったはず。



そういえば宗平は綾美さんに居場所を教えていなかったと思うけれど、すぐにわかったのも不思議な話だ。




「実はマスターと母が知り合いなんです」



付け加えて綾美さんがそう言った。



「え?そうなんですか?」



まさかの知り合い。



それなら辻褄が合うけれど。



じゃあ、私がここに来ているのは偶然じゃなくて必然だったということだったのか。



「正直、紗英さんがいたのには驚きました。そうへ…兄とここに来たんですか?」



なんとなく気まずそうに綾美さんは名前を言い換えた。



「そうです。初めて来たときは宗平さんと一緒でした」



なんだかモヤモヤとした。



初めて来たときに宗平とマスターは会話なんてしていなくて、まさか知り合いだったなんて思いもしない。



「兄から聞いているかもしれませんが、兄が家を出たとき全く居場所がわからなかったんです。理由もわからなくて…でも母と一緒に気晴らしにここへ遊びに来たときに偶然、白岡の駅で見かけて」



それがあのときだったと言うのか。



学園祭の買い出しの日のことが走馬灯のように頭の中を駆け巡った。



あのときの綾美さんの顔は今でも思い出せるくらい、悲しみとどこか嬉しそうな部分を含んだ表情。



「まさかこの店の近所にいたなんて思いもしなかったです」



追いかけて来たわけじゃなくて、本当に偶然だったんだな。



もしかすると、お母さんがそうなるように仕向けたっていうのも考えられるけど。


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