永遠に叶えたい愛がある。
「マスター…私、どうしたらいいんだろう。宗平を幸せにしてあげたいのに、幸せにしてあげられる方法がわからない」
宗平は今どうしているのだろう。
近くにいたはずなのに、今はものすごく遠い。
何を思って何を考えているのかも全然わからない。
顔を見て、目を見て話したいのにそれができない物理的な距離。
「紗英ちゃん。僕はね、そう思ってくれる人がいるだけで人は強くなれると思うんだよ、どんな状況でも」
「え…?」
「紗英ちゃんも宗平くんもお互いに大切な存在なんでしょ?紗英ちゃん見てるとなんとなくわかる気がする」
私はコクりと頷いた。
お互いに大切な存在。
私にとってかけがえのない人。
「紗英ちゃんは幸せじゃないのかい?」
「幸せ……」
確かに物理的な距離は存在する。
でも最後に約束したんだ。
必ずまた戻ってくるって。
あの時、笑顔で別れたんだよ。
次に会うときのために。
幸せだった。
ううん、思い出すだけで笑顔になれる。
それに、心がぽかぽか温かくなるんだ。
「うん、幸せだよ。私」
「じゃあきっと宗平くんも幸せだよ」
そう言ってマスターはトレンチに綾美さんが飲んでいたコーヒーカップを乗せた。
優しく微笑むとマスターはカウンターへと戻ってい行く。
「いらっしゃい、お好きな席へどうぞ」
新たに来たお客さんに声をかけながら。
「…そうだな。俺も幸せだよ」
その瞬間、背後から聞こえてきた声に目頭が熱くなるのがわかった。