永遠に叶えたい愛がある。
それからというもの、思い出さないようにしてもふとした時に思い出しては奮闘し、気持ちを静めては深呼吸しての繰り返しで、思い出してしまうことにやっと時間の間隔が開いたときには夕食の時間だった。
お母さんが台所から料理を運んでくる。
台所の下でお母さんが必死に漬け込んでいる自慢の漬物が並べられた。
「うわー、うまそう」
待ちきれず横で箸を持っているのは、お風呂上がりでタオルを首に巻く勇人。
なぜに君はここにいるのだ。
私が帰宅したときには居なかったのに、部屋着に着替えてそろそろ夕飯かと階下に下りたときにはすでにあたりまえのようにダイニングテーブルに腰かけていた。
うちは、父母私の3人家族なのになぜかイスは4脚置いてある。
3脚だとキリが悪いから4脚なんだろうけど、まるで勇人のためにあるみたいだ。
これでは本当に家族ではないか。
まあ、いいんだけど。
コトッとお鍋が簡易コンロの上に置かれる。
「今日はおでんよー」
と、お母さんがニコニコしながら火を付けた。
なんでこんな時期外れにおでんなんか。
キッチンで温められていたおでんは、すぐに沸々と汁を沸騰させた。
「いっただきまーす」
と、遠慮もなく勇人が箸を進める。
一番最初にとった具材は…竹輪だった。
その光景は無警戒な私にストップをかけさせる猶予もなく放課後の出来事を思い出させた。
「ち、ちくわを最初に取ることないでしょ!!!!」
思わず口から言葉が出てくる。
「は?なんで?」
汁が垂れないようテーブルに置かれた茶碗に近づき竹輪を加えた勇人が私を見上げた。
「あ、いや、なんでも…」
そりゃそうだよね。
竹輪から私があの出来事を連想させてるなんて知るよしもないんだから。
「そう言えば」
もぐもぐとと竹輪を頬張った勇人は今度はたまごに箸を伸ばす。
「チクワと言えばさ宗平さんに会った?」
「ぶっ!!!おへっ!」
唐突な質問に大根を口に入れた私は思わず吹き出した。
「なんで赤くなってんの」
おでんが熱いからに決まってるでしょ!!
なんてごほごほとむせ込んで言えるはずもなくて。
実はそんなにおでんも熱いからでもなくて。
あんなことがあったなんて言えるはずない。